「わかったよ。桃さんが嫌がるようなことはしない」
しばらく考えた後、優也さんはすんなり了解してくれた。

「ありがとう、優也さん」

今回の異物混入騒動のせいで、私と優也さんの縁談は保留状態となっている。
みんな今はそれどころではないから、「どうなんだ」と聞いてくる人もいない。
もちろん騒動が収まれば答えを求められるのだろうけれど、私は優也さんと結婚するつもりは無い。
それは優也さんも同じじゃないのかなと感じていた。

「そう言えば、飲みに行く約束もまだだったね」
「ああ、うん」

優也さんに押し切られる形で決めた約束も、お互いのスケジュールが合わないうちに今回の騒動があってそのままになっていた。

「近いうちに行こう。その時には僕からも話があるんだ」
「話って、何?」
何だかとっても怖いけれど。

「今度二人の時に話すよ」
そう言ったきり、優也さんは口を閉ざしてしまった。