「優也さん、やめてください」
隼人と川村唯が出て行った社長室で、私は優也さんに訴えた。

ただでさえ優也さんと私には縁談話があって、気を付けないと周りが話を進めてしまいそうで怖いのに、誤解を生むような発言は困る。

「何が?」
わかっているはずなのに、優也さんは小首をかしげて見せる。

こうやって一緒にいる時間が長くなることで、優也さんとの距離は間違いなく近くなったと思う。
頭がよくて優秀なビジネスマンだってことも、悪い人でないのも承知している。
でも、だからと言って結婚相手にしようとは思えない。

「川村さんが誤解をするようなことを言わないで欲しいの」
ただでさえめんどくさい状況なのに、これ以上騒がれたくない。

「誤解されたくないのは、川村さんにだけ?」
「え、ええ」

優也さんは時々こちらがドキッとするようなことを言う。
その度に、嘘をすべて見破られているような気持ちになるし、優也さん自身にも何か大きな秘密があるような気にもなる。