「本当に大丈夫か?」
壁を背にボーっとパーティー会場を眺めている私に向かい、隼人の顔が近づいてきた。
「平気だから」
距離が近いのよと自分から避ける。

きっとただ顔色を見ようとしただけなのだろうけれど、いつも隼人が使うシトラスコロンの香りが昨夜の記憶を呼び起こしてしまい、私は一人で赤面した。

望愛さんが言うように、片時も離れることなく隼人の側にいたいと思う気持ちはあるし、少しでも長く今のままでいたいとも思う。
でもそのためには、隼人が一条の人間になるか、私が高井の両親やお兄ちゃんやおじいさまを捨てて家を出るしかない。
今まで育ててもらったことに対して少なからず恩を感じている私にそんなことはできないだろうし、きっと隼人も認めないだろう。
結局私と隼人は結ばれない運命なのだ。