清香先輩の幼馴染みの男は、清香先輩と産まれたときから学校もずっと同じの腐れ縁。それもこの高校までだと言ってたけど。奴は今までずっと清香先輩を、甘えるばかりの便利な相手として扱ってきたんだろう。……いいところもあるんだろうけどと付け足す気持ちは、全て清香先輩の功績だあんな野郎。


 俺の目でさえ見なければ、多分普通の高校生なだけかもしれない。善にも悪にも頭を働かせることも、熱を入れることもサボるタイミングを考えることもする、ごく普通の。


 清香先輩の幼馴染みの男は、同じクラスの好きな女子が家の事情だとかで困っていたから図書委員を代わってあげ、家の事情とやらがなくなり降って湧いた好きな女子と過ごす時間のために、清香先輩を巻き込み今日みたいに雑用から逃れ、罪悪感からかなんなのか、せめて鍵くらいは返すとかなんとか薄っぺらいこと言ったに違いない。


 バカな俺は、きっとずっと前から続いてたその身勝手さをストレートに清香先輩に問いかけてみたこともあった。それはまだ、俺が清香先輩に心を寄せる前のこと。なんの考えもなしに、たまたま居合わせた、何回か話しただけの関係だった頃。


 ……感じてしまった清香先輩の気持ちと、それを解りながら利用する幼馴染みの男に腹が立って。


――こんなことももうすぐ終わるわ――


 悟ったみたいに呟く清香先輩に俺は心底後悔して、そうして彼女にとって俺が一番優しくあれるようにと思った瞬間だった。


 歯がゆい時間は案外長く、けどそれは、清香先輩が想ってきた長さとか深さに繋がっていて……俺にとっての残酷なそれは清香先輩に必要なんだと、あちこち散らかる気持ちが混ぜ合わさって破裂しそうにもなったけど、堪えられた。


 全てを捨てて王子に捧げて奪われ、叶わず泡になってしまうお姫様と、枝珊瑚のヘアアクセサリーを大切に大切にして、言葉を飲み込む清香先輩が重なる。


 もうすぐだと言っていたそのとき、僅かでもいいから、清香先輩の悲しむ量が少なくあればと願った。