「やあ、桐生さん、朱里さん。こんばんは」
「東条さん、こんばんは。この度は東森芸術文化センター管弦楽団の皆様をご紹介くださって、本当にありがとうございました。お陰様で素晴らしいコンサートになりました」
「どういたしまして。赤坂さんからも連絡がきましたよ。とても良い機会を頂いたと。素敵なコンサートになり、団員も感激していたそうです」
「そう言って頂けると有り難いです。まだまだ手探りの活動で、段取りなども不手際があったかと思いますが、皆様快く協力してくださって、本当に感謝しております」
「これからも、どんどん声をかけてくださいね。まずは私も、訪問演奏しっかり準備しますね」
「ありがとうございます。また詳しく打ち合わせをさせて頂ければと思います。よろしくお願い致します」

瑛の言葉に、朱里は一緒に頭を下げる。
以前は朱里が主に話をしていたが、今では瑛がやり取りし、朱里は隣で頷いていることが多くなった。

「朱里、テラスへ行こう」

ひとしきり挨拶が終わると、瑛は朱里の肩を抱いて外へと促した。

「そこに座って」
「うん、ありがとう」
「飲み物と、軽く食べる物も取ってくる」

そう言い残し、瑛はホールに戻って行った。

朱里はぼんやりと外の景色を眺める。
ホールの賑わいと熱気が嘘のように、テラスは静かで心地良かった。