「うわー、可愛い!これヴァイオリンの絵かな?たのしかった♡だって」

ホールの多目的室を借りての打ち上げ。
皆でわいわいと食事をしながら、お客様アンケートに目を通す。

どれもこれも、楽しかった!おもしろかった!の文字が並んでいた。

「あ、これあの男の子じゃないかな?ヴァイオリンはめっちゃむずかしくてやめたかったけど、これからもがんばります!だって」

朱里がアンケート用紙を東条に見せる。

「おおー!嬉しいね!今日のコンサートが何かのきっかけになってくれたら、こんなに喜ばしいことはないよ」
「そうですね!」

ふふっと二人で微笑み合う。

すると、瑛の父がやって来た。

「マエストロ、今日は本当にありがとうございました!いやー、素晴らしい演奏でした」
「こちらこそ。このような機会を頂き本当に感謝しております。私自身も、今回は貴重な経験をさせて頂きました。本当に楽しかったなあ。ねえ、朱里さん」

そう言って朱里に同意を求める。

「ええ、本当に。仕事なのを忘れて、私も普通に楽しんじゃいました」
「朱里ちゃんの司会も良かったよー。東条さんとの掛け合いもバッチリだったね」
「ははっ!俺達、漫才やろうか?」
「マエストロ、本職をお忘れなく」

三人で、あはは!と笑い合う。

瑛はその輪に入れず、離れた所で一人佇んでいた。