打ち合わせが終了し、立ち上がって皆で挨拶していると、ふと東条が思い出したように話し出した。

「そう言えば今週末に、音楽関係者のパーティーがあるんです。ご一緒にいかがですか?」

え?と、朱里達は驚く。

「音楽関係者の方々ばかりなのですよね?そのようなパーティーにお邪魔しても?」
「ええ、もちろん。作曲家や指揮者、楽団のスポンサーなど幅広く集まって、まあ、今後のクラシック音楽業界について雑談する、みたいな気軽なパーティーですよ。桐生ホールディングスさんの試みも、おそらく注目されると思います」

すると社長が口を開いた。

「それはぜひ参加させて頂きたいですね。今回は新東京フィルさんにお願いしましたが、今後は過疎地域でも演奏会を開催したいと思っています。地元の楽団に地元のホールで演奏してもらい、地域の活性化にも繋がればと」
「それは素晴らしいですね。地方の楽団はどんどん少なくなっていて、その地域の子ども達が生の音楽に触れる機会も減っています。桐生さんの活動は、我々音楽業界の人間にとっても非常に有り難いです」

社長は東条に頷いてから、改めて朱里と瑛を振り返った。

「私はスケジュールがタイトで無理そうだが、二人は?行けそうなら行って欲しい」

朱里が大丈夫ですと答えると、瑛も頷く。
東条は嬉しそうに笑った。

「良かった!じゃあ、あとで詳細をメールしておきます。当日、会場でお待ちしていますね」
「はい、ありがとうございます。どうぞよろしくお願い致します」