ぺこりと丁寧にお辞儀した女の子……シャルロットさんは、顔を上げると優しく微笑む。

「先程まで、私を襲ってくる人から逃げておりまして……」

そう言って、シャルロットさんは詳しく話をしてくれた。いきなりこの世界に閉じ込められて、いきなり物の怪に襲われて、今まで物の怪から逃げていたんだそう。

僕は、簡単にここが本の世界であることと物の怪について話す。そして、僕らは自己紹介をした。

「ノワールさんにメルキュールさん、カズさんにリオンさん……ですね!」

僕らの名前を何度か口にしたシャルロットさんは、「覚えました!」と微笑む。

その時、僕の目の前に黒髪にハイライトのない赤い目をした男性が現れた。男性は、所々破れた黒いフード付きのマントを付けている。

「…………こいつ、物の怪だ……」

いつの間にか手に持っていた杖を握り締めながら、メルは呟いた。

「こいつが、物の怪?どこからどう見ても、人だろうが」

「……メルが、人と物の怪を間違うはずがない。彼は、人型をした物の怪ってことか……」

カズの言葉に、僕はそう返す。

僕らが話をしていると、物の怪は無言で僕を思い切り蹴り飛ばした。

ここで、僕の意識は途切れた。