(え……?)

 ガタンッという大きな音に気付いて見れば、ギャル系女子たちが怖い顔でこちらにやってくる。
 ――いつもKanataのことで黄色い声を上げていた子たちだ。

「ねぇ、小野さん。羽倉がKanataって、マジ?」
「え……」
「小野さんて羽倉と付き合ってるんでしょ? よく一緒にいるじゃんね」

(ど、どうしよう)

 めちゃくちゃ睨まれて、怖くて固まっていると。

「なーに言っちゃってんの? りっかちゃんと付き合ってるのは俺だってば!」
「!?」

 がばっと妹尾くんに肩を抱かれてびっくりする。

「……今だけ、そういうことにしとこ」

 そう、耳元で小さく囁かれる。

「……そうなの? 小野さん」
「う、うん」

 私が頷くと、妹尾くんは大きな声で続けた。

「あの記事だろ~? 俺らも驚いててさ~、もしほんとに羽倉がKanataだったら気付けなかった俺ら全員アホじゃね?」

 すると途端に彼女たちの顔色が変わった。

「そ、そうだよね……あたし、羽倉の前でめっちゃKanataの話してた……」
「あたしも……え、あたしら恥ずーー!!」

 彼女たちはぎゃーっと悲鳴を上げ、私から視線を外した。
 妹尾くんに押されるようにして机に向かいながら、私は小さくお礼を言う。

「ありがとう、妹尾くん」

 すると妹尾くんは瞬間目を丸くして、ぱっと手を離してくれた。

「いやいや。あいつから連絡あったら俺にも教えてよ」
「うん」


 ――その日、奏多くんはやっぱり学校に来なかった。