無言で近くにあった椅子に腰を下ろした奏多くんに代わって妹尾くんが答えてくれたけれど、新居さんは怪訝そうに眉をひそめた。
 
「ま、まぁ、とりあえずあんま時間ねーし、早速一曲行ってみようぜ!」

 妹尾くんが慌てたように言って、私に分厚いファイルを持ってきた。

「りっかちゃん、この中で歌えそうなのある?」
「え?」

 ファイルの中にはたくさんの楽譜が入っていた。
 パラパラと捲っていくと、その中に好きな楽曲のタイトルを見つけた。
 以前カラオケでもよく歌っていた曲だ。

「この歌好き」
「りょーかい!」

 妹尾くんは新居さんと植松くんにそれを伝えると再び私の元へ戻ってきた。

「はい、これマイクね」
「う、うん」

 手渡されたマイクを握り、改めて緊張を覚える。

「んじゃ、早速! 皆よろ~!」
「おー!」
「いくよー!」

 カッカッカッと新居さんがスティックでカウントを打ち、演奏が始まった。

 ――!!

 カラオケとは全然違う、迫力ある生の音に包まれてビリビリと鳥肌が立つ。
 皆さすがに上手い。

(すごっ……私、この中で歌うの……?)

 じわりと汗がにじんだ。