「お、お邪魔します」
「どーぞ」

 羽倉くんが玄関ドアを開けてくれて、私はおずおずと彼の部屋に入った。

(あ、羽倉くんの匂い)

 そんなことにも緊張を覚える。
 中はワンルームで、あまり物が置いていないシンプルな部屋だった。

(なんというか、男の子の部屋って感じ)

「適当にくつろいでて。お腹すいたでしょ」
「う、うん。でも、本当にいいの? お昼。コンビニ弁当で良かったのに」
「簡単なものになっちゃうけどね。りっかはゆっくりしてて」

 そして羽倉くんはキッチンへと向かった。
 そう、今日はなんと彼がお昼ご飯を作ってくれるそうだ。
 聞いたときには驚いたけれど、一人暮らしなら少し納得だ。きっといつもちゃんと自炊しているのだろう。

 私はそわそわとローソファに座り改めて部屋を見回す。

(綺麗にしてるんだなぁ)

 と、部屋の奥にベッドを見つけ、私は急いで視線を逸らした。

(いやいや、別に意識なんてしてないし!?)

 小さく首を振っていると、ジューっという音がしてキッチンに視線を向ける。
 そこにはエプロンを着けた彼が立っていて、私はその背中に釘付けになった。

(羽倉くん、エプロンなんてするんだ。や、そりゃするだろうけど……)

 そんな初めて見る彼の姿にキュンとしてしまった。