――そして、あっという間に日曜日。

 バイトを終え店を出ると、いつもの場所で羽倉くんが待っていてくれた。
 Kanataの姿ではない、眼鏡をかけたいつもの羽倉くんだ。

「お疲れ」
「ありがとう。店まで来てくれて」
「行こうか」
「うん!」

 今日はいよいよ、おうちデートの日。

(色々と準備はしてきたし、失礼のないようにしなきゃ!)

 と、彼の家に向かって住宅街を歩いている時だった。
 羽倉くんは私が持っている紙袋を不思議そうに見下ろした。

「何それ」
「え? 一応ご挨拶にと思って、ちょっとしたお菓子」
「ご挨拶? 誰に」
「え? ご家族に」

 答えると羽倉くんは自分を指差し言った。

「俺、一人暮らしだけど」
「え!?」
「言ってなかったっけ」
「言ってない!」

 思わず、大きく首を横に振る。

「そっか。俺実家ちょっと遠くて、仕事行くのに不便だったから去年からこっちで一人暮らし始めたんだ」
「そ、そうだったんだ」

(――ってことは……)

「そこのアパートが俺ん家」

 羽倉くんが新しそうな綺麗なアパートを指差した。

(正真正銘、二人っきりってこと!?)