「……寝ちゃったのかな?」

 いつもと同じくらいの時間に電話をかけたけれど、彼は出なかった。

(そういえば今日、昼寝出来なかったしなぁ)

 不眠症の彼が眠れたのならそれは良いことだ。
 何度も掛けるのは申し訳ないと、私はメッセージを送ることにした。

『お疲れ様。また明日ね』

 続けて『おやすみ』のスタンプを送信する。

「よし、と。私も寝よ」

 ベッドに横になって目を閉じる。

(ここのところずっと夜は羽倉くんの声を聞いていたから、ちょっと寂しいなぁ……)

 そんなことを思いながら、私は眠りについた。



 ――翌日。

(羽倉くん、まだ来てないんだ)

 朝になれば会えると思ったのだけど、彼の机はまだ空っぽだった。
 私は溜息を吐きながらバッグを机に置いて、スマホを見る。
 昨夜送ったメッセージはまだ既読になっていない。

(大丈夫かな。まだ寝てたりとか……)

 そのときだ。

「ねぇ見たー!? めちゃくちゃショックなんだけど!」
「見た~!」

 ギャル系女子たちの悲鳴じみた声が聞こえてきて、私はそちらに視線を送る。

「Kanataの熱愛報道! ガチ凹みなんですけど~~」

「!?」

 私は焦って、スマホで検索しはじめる。

(まさか、まさか……!?)

「でもさ~相手があの芹歌(セリカ)だし、ムカつくけどお似合いかも~」
「それな~でもやっぱショック~」


 ――『人気モデル同士の熱愛発覚!』


 そんな芸能ニュースの見出しを見つけて、頭の中が真っ白になった。