「お前、りっかちゃんにボーカル断るように言ったろ」
「言った」

 はっきりとした肯定に、妹尾くんはハァと溜息を吐いた。

「だと思ったわ。りっかちゃんは歌いたそうだったじゃねぇか!」
「……」
「独占欲だかなんだか知らねーけどよ、りっかちゃんが可哀想だろうがよ!」
「……」
「お前だってさ、りっかちゃんがもっと輝いてるとこ見たくねぇの? うちのボーカルやったら絶対人気出ると思うし」
「……別に、人気なんて出なくていい」

 ぼそっと答えた羽倉くんに、妹尾くんはまたも苛ついたようで。

「お前はな!? 彼氏ならりっかちゃんの気持ちもっとちゃんと考えてやれってことだよ!」
「……」
「あーーもう、なんでりっかちゃん、こんな奴に惚れたんだろうなぁ!」

 がしがしと頭をかきながら妹尾くんは続ける。

「そもそもな、俺は前からお前のことが気に食わなかったんだよ」

 急に声のトーンを低くした妹尾くんにハラハラする。

「Kanata、わかんだろ」

(……!? やっぱり妹尾くん、羽倉くんがKanataだって知って……)

 さっと血の気が引いた。

 ――でも。