――そして、放課後。
 私は結局気になって、体育館裏の物陰にこっそりと隠れていた。

(弦樹、絃葉、ごめん、ちょっとだけ待ってて……!)

 妹尾くんは私が来たときにはすでにこの場にいて、イライラとした様子でスマホを見つめていた。
 ――と、そこに彼がふらりと猫背の姿勢で現れた。

(羽倉くん……)

 満足げに口の端を上げて、妹尾くんはスマホをポケットに仕舞った。

「話って何? この後用事あるから、早くして欲しいんだけど」

 羽倉くんの問いに妹尾くんはぶすっと答える。

「りっかちゃんのことだよ」

 いきなり名前が出てどきっとする。
 羽倉くんの目が少し鋭くなるのがわかった。

「……りっかが、なに?」
「お前ら付き合ってるんだろ?」
「そうだけど」

 即答した羽倉くんにまたどきりとして、でも妹尾くんは苛ついたように続けた。

「それについても色々言いたいことはあるんだけどよ。今日は歌の話だ」
「歌?」