……ちなみに、先ほどの妹尾くんの妙な視線の意味は、その後バイト先で判明することになった。

「小野さん、もしかしてそれ、キスマ?」
「え?」

 先輩にニヤニヤ顔で言われて、最初意味がわからなかった。

(キスマ……?)

 私はバイト中いつもポニーテールにしていて、先輩の視線はそんな私の首筋を見ていて。

(そういえばさっき妹尾くんも同じとこ……)

 それから私は昼間羽倉くんにその場所にキスされたことを思い出したのだ。

「……っ!!」

 慌ててその場所を手で隠す。

「ち、違います! その……虫に刺されて!」
「へぇ~そうなんだ~?」

 先輩は全然信じていない様子で。

(もう~勘弁して~~)

 きっと、いや絶対、妹尾くんもこれに気付いたのだろう。
 私はその後髪を下ろし、その場所を隠したのだった。


「お先に失礼しま~す」

 バイトを終えコンビニを出ると、バリカーに誰かが腰掛けていてギクリとする。
 瞬間、羽倉くんだと思ったのだ。
 でも、その人は煙草を吸っていて、彼とは全くの別人だった。

「はぁ~~」

 肩を落とし長い溜息を吐く。

(私、意識し過ぎ……)

 また火照ってしまった顔に手を当て、私は帰途についた。