「あ、今、カッコいいって思ってくれた?」
「や、別に」
「なんだ~」

 妹尾くんはちょっと口を尖らせて、でもすぐに笑顔に戻り言った。

「で、本題なんだけどさ」
「うん?」
「りっかちゃん、ボーカルやってみる気ない?」
「へ?」

 思わず可笑しな声が出てしまった。

「ボーカル。今探してて」
「いやいや、なんで私!?」

 慌てて両手を振る。

(意味がわからないんだけど!?)

「私部活入る気ないし、というか歌えないし!」
「なんで? あいつの前で歌ってたじゃん」
「……っ」

 言葉に詰まる。
 そんな私を見て妹尾くんは、にーっと笑った。

「昨日さ、りっかちゃんの歌声に惹かれて俺あそこ上ってったんだよね」
「!」
「そしたらりっかちゃんと羽倉がイチャイチャしててびっくりしたんだけどさ」
「い、イチャイチャなんてしてないし!?」
「まぁ、それはいいとして。そのときに、りっかちゃんの歌声いいなって」

 妹尾くんが眩しそうに目を細め私を見る。

「欲しいなって思っちゃったんだよね」

 どきっと胸が鳴る。

「……で、でも私、ほんと時間ないから」
「うん、わかってる。弦樹くんと絃葉ちゃんお迎え行かなきゃだしね」

 私は頷く。

「わかってるんだけどさ、ほんの10分でいいんだ。放課後、時間くれないかな」
「でも……」

 と、そこで予鈴が鳴った。