――翌朝。

「りっかちゃん、おは~!」
「……」

 下駄箱前で妹尾くんがニコニコ手を振っていて、私はげんなりとした。

(……そうだ。妹尾くんのこと、すっかり忘れてた)

「おはよ……ぅっ」

 挨拶しかけて、でも私は周囲からの視線に気付く。
 妹尾くんはとにかく目立つのだ。
 私は慌てて彼から顔を背けて下駄箱に靴を入れた。

「一緒に教室行こ、りっかちゃん」
「……」

 上履きに履き替えながら聞こえないふりをする。

「あれ~? りっかちゃんなんか元気なくなくなくない?」

(なにそれどっち)

 不覚にもちょっと笑いそうになってしまった。
 でも早足に階段へと向かうと、妹尾くんは昨日のようについて来た。

「待ってよ~りっかちゃん」
「昨日言ったよね。こういうの困るって」

 階段を上りながら振り返らずに言う。

「ん? でもさ、言いふらしちゃっていいの? あのこと」
「!」

 さすがに振り返ると、彼はにっこり笑っていた。