よっと立ち上がり、妹尾くんは言った。
「可愛いね」
「え? う、うん……」
「んじゃ、俺行くね」
「え?」
妹尾くんは笑顔で手を振った。
「明日また学校で! 弦樹くん絃葉ちゃんバイバーイ!」
「ばいばーい!」
「ばいばーい!」
そうして小走りで学校の方へ戻っていく妹尾くんを私は呆然と見つめた。
「なんだったの……」
なんだか、どっと疲れた気がした。
「お先失礼しま~す!」
今日も22時にバイトを終え、私はコンビニを出た。
と、店前のバリカー(アーチ型の車止め)に誰かが座っていることに気付く。
黒いパーカーのフードを被った長身のその人は立ち上がってこちらに近づいてくる。
一瞬、逃げようと思ったけれど。
「えっ、羽倉くん!?」
そう、それはKanataの姿をした羽倉くんだった。
「お疲れさま、りっか」
「ど、どうしたの? 今日もお仕事帰り?」
「うん。……ちょっと、りっかと話したくて」
なんだろうと首を傾げると、彼はなんだか少し怖い顔で言った。
「今日、妹尾と一緒に帰ったの?」
「え」