ふぅと息を吐き出す。

(なんか、結構喋っちゃったな。……りっか、だって……)

 思わず口元が緩んでしまって、ハタと我にかえる。

(いやいや、だから、そういうのじゃないから!)

 ぼすんっとベッドに仰向けになる。

「……」

 天井を見つめながら先ほどの会話を思い出す。

(……あのとき、どんな顔して笑ったんだろう)

 羽倉くんの笑った顔なんて見たことないから、少し気になった。



 ――翌日。
 今日も変わらず羽倉くんは階段上で私を待っていた。

「りっか、遅い、早く」
「はーい」

 いつものように膝枕をしてあげて、目を閉じた彼にちょっと訊いてみる。

「昨日、あの後眠れた?」
「1時間くらい」
「えっ、すぐに起きちゃったってこと?」
「そう。だからりっか、歌って」
「……」

 ふぅと息を吐いて、私はいつものように小さく歌い始めた。
 見ると酷いクマは相変わらずで。

(不眠症か……大変なんだろうな、病院には行ってるのかな)

「え?」
「え?」

 急に聞こえた声に視線を上げると、階段下に金髪の男子がいた。

(――妹尾(せのお)くん……!?)