――日に日に、校門前の記者もギャラリーも少なくなって、Kanataの正体についての話題も他の新しいゴシップに押されどんどん薄れていった。

 私は昼休みと放課後、そして土日も軽音部の練習に打ち込んでいた。
 ボーカルを引き受けて本当に良かったと思った。

(歌っていれば、忘れられる……)



 日曜日、今日も私たちは朝から部室に集まって練習をしていた。

「うん、もう完璧だね」
「来週の本番が楽しみになってきたー!」

 鈴子ちゃんが言って、植松くんが伸びをするように両手を上げた。
 そして妹尾くんが元気よく続けた。

「というわけで、今日はこの後皆で遊びに行こ~!」
「え?」

 思わずぽかんとしてしまった私に、彼はにっと笑った。

「気晴らし気晴らし! 最近練習ばっかで全然遊べてなかったしさ!」
「そういやこのメンバーで遊び行ったことなかったし」
「そうそ!」

 皆の優しい表情を見て、私に気を遣ってくれているのだとわかった。
 だから私は笑顔で頷いた。

「うん!」