緊張はもうMaxで、昨晩考えた話の内容やどう自己紹介するかを、頭の中でシュミレーションをひたすら繰り返していた。


「ただいま」


大空が玄関のドアを開けたのと同じタイミングで、リビングの奥から「お帰りなさい」とこちらへ向かってきたのは、大空のお母さん。

花柄のエプロンで手を拭きながら、にこにこ嬉しそうに迎えてくれている。 
その笑った顔が、大空にそっくりだ。


「星七ちゃんもいらっしゃい! 大空から、話は聞いてるわよ」

「初めまして! 井筒星七です。 大空さんには、いつもお世話になっています」

「全然よ! こちらこそ。 さぁさぁ、上がってちょうだい」


靴をきれいに揃えてから「お邪魔します」と言って室内へと入らせてもらう。 後ろから大空がついてきていてチラッと振り向いて顔を見ると、にっこりと笑ってくれた。

この笑顔はきっと〝安心して〟の合図だ。
私があまりにも不安そうに大空を見るから、安心させてくれたのだと直感でそう思った。


「おぉ、帰ったのか」


お母さんに案内されたリビングへと入ると、お父さんが広げていた新聞の端っこからひょっこりと顔を覗かせた。

丁寧に新聞を畳んで近くのガラステーブルに置くと、こちらへとやって来る。