一通り片付けが終わり深山さんが病室から出ていくと、テレビドラマでよく見かける淡いブルーの部屋着に着替えた。

ベッドに横になり、スマホを確認する。 昨日電話に出なかったため、案の定星七からメッセージが届いていたけれど、俺は返信せずにスマホを枕元に置いた。


本当は、今すぐにでも連絡したい。


でも、今のこの俺の状態で、星七を笑顔にしてあげることは難しい。

もともと星七を笑顔にしたくて、梅沢先生との関係を終われるよう話しかけた。 それなのに今、俺がこんな状態では、どうすることもできない。


ーーバンッ!


悔しくて、惨めで、情けなくて。

俺はこぶしで、ベッドを強く叩きつけた。
その反動で、スマホが〝ゴトッ〟と鈍い音を立てて床に落ちる。

それと同時くらいに病室のドアがノックされ、先ほど対応をしてくれた深山さんが再び現れた。 手には、点滴バッグを持っている。


「遠山さん、そろそろ点滴繋ぎましょうか」

「……はい」


これも慣れた手付きで準備を済ませ、俺の左腕に何食わぬ顔で点滴用の針を刺す深山さん。 看護師の俺が、まさか同業者にお世話になるなんて、想像もしてなかったな。


「治療は大変だけど、頑張って仕事復帰目指そう」


そう励ましの言葉をくれた深山さんの話を、俺は窓の外を眺めながら右耳だけで聞いていた。