きっと、今私の顔は赤くなっていると思う。
それを遠山くんに見られてしまうのが嫌で、両手で顔を隠したまま口を開いた。


「……まだ、一緒にいて?」


まるで蚊の鳴くような小さな声。 自分が遠山くんの立ち位置だったら、「は? 聞こえない」と絶対聞き返している。
だけど遠山くんは聞き返すことはせず、その代わりに私をぎゅっと抱きしめた。

あたたかい遠山くんの腕の中。 さっきまでの恐怖なんて一瞬にして消えてしまうくらいの安心感がある。


「一緒にいて、いいんですか?」

「うん……少しだけでいいから」

「わかりました。 でも、なにもしませんよ?」

「……は?」


それがどういった意味での〝なにもしない〟ということなのか、理解するのに時間を要した。
やっとわかって、真っ赤になっている私を見て笑っている彼。

そんな彼と一緒にアパートまで戻って来ると、私はアイスコーヒーを淹れた。 ソファーに腰かけている遠山くんに手渡すと「ありがとうございます」と言ってさっそくコーヒーを一口飲んだ。

私も、遠山くんの横に腰かける。


「引き留めてごめんね?」

「構わないですよ。 1人になりたくなかったんでしょう?」

「うん……まぁ、そんなところ」