星七のお母さんが病気だと教えてもらったのは、寒い日のことだった。

聞き間違いかと思ったけれど、どうやらそうではなかったらしく星七は涙を堪えながら教えてくれた。
突然の再会と、病気の報告。

なにもかもが急な展開で頭がついていかないだろうに、星七は毎日のようにお母さんの病室へと足を運んでいた。


「山屋さん、点滴、交換しましょうか」

「あ、大空くん。 ありがとう」


俺が星七の彼氏だと知ってからは、俺のことを下の名前で呼んでくれるようになったお母さん。

入院してきたころよりも笑顔が増えたような気がして、それが嬉しかった。


「ねぇ、あの子、迷惑かけてない?」


ベッドサイドに置いてあるスマホに触れながら、お母さんが急に問いかける。

「そんなことないです。 いつも助けてもらってます」と言うと、嬉しそうに笑って身体をベッドに預けた。
笑顔が増えたが体力は減ってきているようで、長時間座位でいることが辛いよう。

夜勤帯に何度か嘔吐することもあったけれど、それは星七には伝えずにいた。

きっとそんなことを伝えられても悲しいだけだろうし、星七のことだろうからカルテで情報を得ているだろうと思ったから。

それでもなにも言わずにお母さんに寄り添っている星七は、強いと感じた。