にわかに慌て始めた私とは反対に、蒼太はなぜか堂々としている。

これ以上、蒼太の顔を見ていられなくて、逃げるように蒼太と別れた。


廊下で走っている未紘とすれ違った。

すれ違う瞬間の未紘の顔を見て、俺は驚いた。

未紘の顔は紅潮していた。

何かに照れているような。

俺は未紘に好きな人がいることを察した。

そして、それは俺じゃないってことにも。

「未紘…」

俺は思わず名前を呼ぶ。

その声は未紘には届かないまま静かな廊下に吸い込まれた。