私に残されたものなんて何もない...。


2023年8月7日。午前0時0分。
今日は私、佐伯 日向(さえき ひなた)の17歳の誕生日。
今、私は今10階建てマンションの屋上にいる。
ここから飛び降りたら楽になれる。
やっと...やっと...自由になれるんだ。

「バイバイ...」

あぁ、、私の人生はなんだったのだろう。
なんのために生まれたのかな...。
私は、17年の人生に幕を閉じた。

...

うん?なんだか眩しい。ここは...?
目を開けてみると...

視界の先にはパパとママらしき人が私を覗き込んでいる。
私、死んだんじゃ...もしかして、生きてた!?
そんなことを考えていると、

「君の名前は、日向(ひなた)!ようこそ我が家へ!!」

パパらしき人がそう言った。
え!?日向って...私の名前...なんで?

「明るく元気に育ちますようにってパパとママで決めたのよ。」

ママらしき人がそう言った。
私は、2人に抱っこされた。
えぇーー!?少しも状態が理解できない。

ふと周りを見渡すとカレンダーがあった。
2006年...6月...?私の生まれた年...?
今って2023年じゃ........

「えぇーーーーーーーーーー!!」

思わず声が出てしまった。

「あー、ごめんごめん。日向ヨシヨシ大丈夫だよ〜」

なぜかあやされている。
いや、待って2006年って言うことは...。
私、赤ちゃん?パパとママらしき人じゃなくて、パパとママ...?

家も新築の匂いがする。パパとママ2人とも若い。

...タイムスリップ?走馬灯?なんなの?

生きるのに絶望して自殺した、、はずなのに...。
私は、学校でいじめを受けていた。
上靴にはゴミを入れられ、クラスのみんなから無視され、教科書隠されたり。それ以外もたくさんたくさん嫌なことされていた。
それに、なによりも幼なじみが主犯だったなんて思わなかった。
親に言えない。先生には相手にされない。
頼れる友達もいない。
ただただ、毎日が辛かった。
そんな生活から抜け出したかった。
それだけなのに...。


...


「あら、日向起きたのね。」

ママの声が聞こえた。なんだか安心する。
私、寝ちゃってたんだ。

「今日は、日向のハーフバースディの日よ。」

「Happybirthday!日向!!パパとママのところへ生まれてきてくれて本当にありがとう。毎日が幸せだよ。」

「日向、人生はいい事ばかりじゃなく悪い事もあるけどパパとママがいつでも味方よ。」

2人がお祝いしてくれている。
私ってこんなに愛されていたんだ...。

ニコッ。自然と笑顔になれた。

「今、笑ったぞ!!写真写真!!」

笑っただけで大袈裟だよパパ...。なんて幸せな時間なんだろう。

なんか、この光景見たことあるような。

こんなに笑い合ったのはいつぶりだろう。

2023年の私たちにはない光景だよ...。2人は、共働きで家族みんなが揃うのは月に数回。会話もほとんどない。
なぜかパパとママが嫌に感じる。これって反抗期かな?気づいたらお互い干渉しなくなっていった。


...


「日向、おはよう!朝ごはん食べましょうね。」

私は、椅子に座らせてもらい離乳食を食べさせてもらっている。離乳食ってこんな感じの味なんだ。1度食べているはずなのに忘れてしまっている。でも、どこか懐かしい味だ。

今日は...2007年6月。

「今日もよく食べてお利口さんだな!どんどん成長してくれ!パパはうれしいよ。」

離乳食を食べ終え、私の前にパパが来た。

「パパって言ってごらん。」

「抜けがけはズルいわよ!ここは、ママって言って欲しいわ。」

言葉...?私、まだ話せてないんだ。今は、6月だから10ヶ月。そろそろ話す時期になるんだ。

たしか私は、パパから言えるようになったんだっけ?

「パ...パ...」

思わず口に出てしまった。

「日向!!今、パパって!!」

パパは、ガッツポーズをして大喜びしている。
ママって言えるようになったのは、もう少し先だったような...。


...


「カァーー!カァーー!」

カラス?

「うーーん」

「あれ?日向、起きたのね。」

私寝てた?急すぎるけどなぜか立てそうな気がする。
よいしょ、よいしょ!!

あ!立てた!!!

「え、、!ひ、なた?あなた立ててるわよ!」

ママがすごく喜んで目に涙を浮かべている。
なんて幸せそうなママなんだろう。
一つ一つの変化にこんなにも喜んでくれていたんだ。


でも、なんでこんな起きる度に日付が変わってるんだろう。その場面が読んだこと、見たことある光景、、

「あっ!」

私は、あることを思い出した。これは、アルバムと母子手帳に書いてあったことだ!
1枚1枚、日付とコメントが書かれたアルバム。私ができるようになったこととコメントが書かれた母子手帳。

どれもこれも覚えてないだけで、2人からたくさんの愛をもらたんだ。
未来じゃそんなこと考えられない。じゃなくて、私がそうさせてたんだ...。

てことは、起きる度に私に幸せだった頃の日々を見せてくれてるの...?


...


「日向ー!朝よーーー!」

ママの声が聞こえた。

「う〜ん!」

今日は??

「今日は、入園式よ!家族3人で一緒に行きましょうね!」

この言葉...なんとなく覚えてる。

懐かしい。幼稚園だ。
ここで幼なじみ2人に出会うんだ。

受付を済ませパパとママと離れて教室へ向かう。
出席番号順へ並ぶふと隣を見ると泣きそうな男の子がいる。

この子...。圭...?
圭、(桜田 圭 さくらだ けい)は、保育園で出会った幼なじみで私の初恋相手。

「あなたどうしたの?大丈夫?」

思わず圭に話しかけていた。

「あたりまえだよ!」

涙声で見栄を張る圭。かわいい。
昔から変わらずの性格だな。

「フッ」

吹いちゃった。そしたら、圭は、

「なんだお前!」

まずい、怒らせた。

「ごめん。」

話変えなきゃ。

「私は、佐伯 日向!よろしくね!!」

「...俺は、桜田 圭。よろしくな。」

2人で話していると...

「日向ちゃんと圭くんって言うんだ!」

後ろから声がしたから振り返ってみると、

「私は、七瀬 来奈(ななせ らな)!よろしくね!」

これが私たちの出会い。
3人でどんな時も一緒でいた。


入園式も終わり自宅へ帰宅。

「日向!改めて入園おめでとう!!
もう、3歳だなんて早いな」

「今日は、ご馳走を用意したからたくさん食べるのよ!」

そこには、私の大好きなものがたくさん並んでいた。

たくさん食べて幸せだった。


...


「うん?」

ここは、幼稚園?
薄暗い教室、もしかしてお昼寝タイム?

両隣を見ると、圭と来奈がいた。
2人とも寝てる。って私も今起きたばっかだけど。

そんなこと考えてると2人とも起きた。

「う〜ん、日向?」

来奈が話しかけてくれた。

少し時間が経ち目が覚めた。

「3人でタイムカプセル作ろうぜ!
昨日、テレビで見たんだ!」

圭が急に提案来てきた。

「なにそれー!」

来奈がそういうと説明しだした。

「未来への自分たちへ手紙を書いて土に埋めるんだ!それをおっきくなったらまた掘り起こす!おもしろそうだろ!!」

「なんかすごそう!3人で作ろう!」

タイムカプセルのことなんてすっかり忘れてた。
私、なんて書いたんだっけ?
って未来の私たちじゃ集まるなんて無理だよね。
とにかくやなん書かなきゃ!

思い思い自分たちへ手紙を書いた私たちは、幼稚園にある大きな木下へ穴を掘り埋めた。

「私たちこれからもなにがあっても一緒にいようね。例え、傷つける日が来てもきっとそこには理由が...。ちゃんと話し合おう。」

来奈...。

「なに言ってんだよ、俺ら3人はずっと一緒だ!この先何があっても1番の味方でいような!!」

圭...。

「ほら、日向もなんか言えって!」

「私、私!2人と高校生になっても大人になっても何歳になっても親友でいたい!!」

ちょっと声大きすぎたかな。

「「あたり前だぁー!!」」

2人とも笑顔でこっちを見ている。
私は2人に抱きつき泣いた。

未来の私たちの関係はボロボロ。来奈は、いじめグループの主犯格。それを私に教えたのは、圭。圭は、来奈は今でも仲がいい。だから、聞いたのかな、、
なんで私だけ...。唯一、私を影で支えてくれるのは圭。毎日、メッセージを送ってくれる。

そんなことを思い出すとさらに泣けた。
しばらく、2人から離れることが出来なかった。
あぁ、この時はこんなに楽しかったんだ。
私は、2人のことが大好きだったんだ。


...


家についてベッドへ直行。
あぁ、なんでこんなに大切な思い出をわすれてたんだろう。
涙が止まらない。

わたし、、、

「生きればよかった、、」

そう。生きれば、、、。
こんなこと思ってももう遅いよね。
そんなことわかってる。
私は、そのまま眠りについた。


...


「ハッ!!!」

あれ?ここは...外?
周りは真っ暗でなにも見えない。
目が慣れてきて周りを見渡すと、マンションの屋上にいた。

「私...」

目から自然と涙が溢れた。

「死ねなかったんだ...」

これは夢だったのかな?
ただ今まで見た夢で1番心地のいい夢。


もう一度、人生やり直せるかな...?
少しの可能性を信じて...。

私は、屋上をあとにした...。


ありがとう。生きる勇気をくれて。



Fin.