季節は5月上旬。
外は新緑に囲まれ、過ごしやすい季節になってきた。

この時期には、毎年2泊3日の泊まりでの課外授業が行われる。

対象は院内学級や外来通院に通う子供達。

行き先は、病院からバスで2時間程の距離にある自然豊かな山の中。

近くに湖やコテージがあり、軽いハイキングをしたり、みんなで作ったカレーを食べたり、キャンプファイヤーをしたり、野外での活動を通して、子供達の体力づくりや、心の健康を図る目的で行われている。

夜は、病院が持っている宿泊施設に泊まる。

この宿泊施設は、こうした課外授業などに利用できる。

施設内には、宿泊中に何かあった場合に簡単な治療や処置が出来るように設備が整っている。

課外授業には、数名の医者や看護師、ボランティアも同行する。

美優のように呼吸器疾患を持つ子にとって、自然の空気を吸うことは、呼吸機能の強化や安定が期待できる。

航也は翔太と相談し、美優を参加させようと考えていた。

美優が参加すれば、航也も勤務を調整し医師として参加しようと考える。


〜病室〜
「美優、今ちょっと良い?」

「うん、なに?」

航也は課外授業のチラシを美優に渡す。

「毎年この時期に2泊3日であるんだけどさ、美優もどうかな〜と思って」

「課外授業?泊まり?」

「うん、そう。山の中に行くんだけどさ、空気もキレイだし、湖もあって、美優の喘鳴にも良いと思うんだ。
美優が行くなら俺も付き添いで参加しようと思うし、翔太が華ちゃんもボランティアとして誘ってみるって言ってたよ。どうかな?」

「航也も翔太も華もみんないるなら安心だね。うん!行ってみたい。なんか修学旅行みたいで楽しそう!」

目をキラキラさせて喜ぶ美優。

「ハハハ、そうだな。授業っていっても、自然の中で子供達の気分転換をさせるみたいな感じだからさ、そんな堅苦しいもんじゃないから大丈夫だよ。
美優の場合、あんま外に体が慣れてないから、無理はさせられないから、できることには参加して、無理は絶対にしないこと。まぁ、俺が付いてるから無茶はできないけどな」

「うん、そうだね。参加できるだけでも嬉しい!」

「翔太に参加するって伝えとくな。行くのは2週間後だから、体調崩さないように気を付けような」

航也は美優の頭をクシャっとして出て行った。

喘息は、気圧や気温の変化などで発作が起きやすくなるため、山に入る時はバスの中でも注意が必要。