華には事前に作戦会議の内容を伝えてある。

作戦を聞いた華は最初、ムリムリ!なんて拒否してたけど(笑)
こんなチャンスはあまりないよって伝えたら、頑張って2人になった時に気持ちを伝えてみると言ってくれた。

(頑張れ華!絶対大丈夫!
私も2人に迷惑掛けないように体調崩さないようにしないと…)

1回目の外泊リハビリの時みたいにならないことを祈る。


〜タコパお泊まり会当日〜
土曜日の朝、病室で航也の迎えを待つ。

朝食も完食出来たし、体調はバッチリ!!

「おまたせ。帰れるか?」

「うん!」

「体調良くてよかった。ただし、無理は絶対にするなよ。あの2人に遠慮して我慢するのだけはやめろ。早めに対処すれば大事には至らないから、異変感じたら言えよ?」

航也に毎度のこと釘を刺されるけど(笑)、こーゆー時の航也は真剣だから、素直に話を聞く。

今回の外泊は、航也が点滴セットを持ち帰り、家でも対処できるように準備してくれている。

航也も作戦が無事に終われるように考えてくれてるんだね(笑)

「ありがとう!協力してくれて」

「ん?美優の親友のためならいくらでも協力するよ。それに翔太にも幸せになってもらいたいし、翔太と華ちゃんはお似合いだと思うからさ」

「うん!!」

それから家に向かう途中で、タコパに必要な具材や飲み物とか色々買って、たこ焼き器が無いって言ってたから、電気屋に行って買ってきた。

「買い物ハシゴするのってやっぱり疲れるね…」

「大丈夫か?午前中だから店空いてたけど、入院中とは比にならないくらい歩いてるからな。あとは俺が用意しておくから、時間になるまで寝てな」

華と翔太先生が来るのは午後3時。

そのままベッドに入って美優は体を休める。

楽しみで寝れないかと思ったけど、思いのほかすぐに眠りにつくことができた。

次に目が覚めると、午後2時を回っている。

午前中の買い物で疲れていたけど、起きるとすっきりしていて、体調が悪くないことにホッとする。

リビングに行くと、航也がソファに座ってテレビを見ていた。

「お、美優起きたか?こっちおいで」

航也は美優を呼ぶと、いつものように診察を始める。

慣れっ子の美優は、航也の診察が終わるのをじっと待つ。

「うん、体調は大丈夫そうだね」

「うん、たくさん寝たからすっきりした。準備任せてごめんね」

「準備って言っても適当にな。昼飯食ってないから腹減ったろ?」

「うん」

航也の家はいつも綺麗に片付いているから、これといって掃除する必要もない。

テーブルを見ると手作りのサンドイッチにラップがかけられて置いてある。

航也がスープを温めてくれて、お腹が空いているのもあって、美優は全部食べることができた。

食べている姿を航也はコーヒーを飲みながら見ている。

「ふぅ〜おいしかった。ごちそうさま」

「ん、食べられたな。食欲戻って本当に良かった」

それから2人が来るまでゆっくりと過ごす。


予定の3時を回ろうとしていた時、玄関のインターホンが鳴った。

美優がソファから立ち上がり、玄関に急ぎ足で向かおうとすると、

「おい、走るな!」
すかさず怒られた(笑)

玄関を開けると、華が立っていた。

「華ちゃん、いらっしゃい」
「華っ!」

2人で出迎える。

「鳴海先生、美優、お邪魔します。あ、これ、駅前に新しく出来たケーキ屋さんで買ってきたの。みんなで食べようと思って。あとこれは2人に」

そう言って、ケーキの箱とは別にお菓子の詰め合わせをくれた。

「華ちゃんありがと。気使わせて悪いな」

「いぇ、今日はお願いします。美優とお泊まりなんて、久しぶりで嬉しい!」

「私もだよ〜」

そんな会話をしながら、華を中へ通す。

華は家の広さにびっくりしている(笑)

美優が華を自分の部屋に案内すると、

「美優幸せだね…本当よかった…」

華が小声で言ってくる。

顔を見ると涙ぐんでいる。

「え?ちょっ、なんで華泣いてるの?」

「だって、鳴海先生と出会うまではさ、美優1人で頑張ってたから…よかったなって…」

「もう、泣かないでよ(笑)」

(華って本当に優しくて、心のきれいな人なんだと改めて感じる)

リビングに戻ると、航也が華に話し掛ける。

「翔太も同じマンションだから、もうじき来ると思うよ」

「え?翔太先生このマンションに住んでるんですか?」

「あ、知らなかった?うん、俺と同じマンションに住んでるの。病院に近くて便利だからね」

またまたびっくりしてる華(笑)

するとインターホンが鳴る。

「翔太来たな。俺出るよ」

航也が玄関に向かい、リビングを出て行く。

「翔太先生もこのマンションに住んでたの?」

華がまた美優に尋ねる。

「そうそう、私言ってなかったっけ?」

「言ってないよ!」

(ハハ(笑)華落ち着いて…)

航也と翔太がリビングに入って来た。

「華ちゃん、こんにちは。美優ちゃん今日はよろしくね。外泊できてよかったね。はい、これ」

作戦の事なんて知る由もない翔太は、病院で会う時と変わらない様子で話し掛けてくれる。

果物の盛り合わせと飲み物とかお菓子とか色々買ってきてくれた。

「翔太先生、ありがとう。こんなにたくさん。果物美味しそう!」

「今日は泊まらせてもらうから、ちょっとだけどお礼に。果物も良かったらみんなで食べよう」

それから、飲み物やお菓子を囲んで、4人で話をして盛り上がった。

3時のおやつに華が買ってきてくれたケーキをみんなで食べる。

航也が小中高の卒業アルバムを引っ張り出してきて、航也と翔太の小さい頃の話を聞いたり、美優と華の思い出話をしたり、色んな話をして盛り上がった。

初めはちょっぴり緊張していた華も、楽しい会話に緊張がほぐれたみたいだった。

それからあっというまに2時間が過ぎて午後5時。

そろそろたこ焼きを始めようということになり、翔太先生と華がキッチンで準備をしてくれることになった。

「美優、ちょっと寝室に行こう。胸の音聞かせて」

航也が突然話し掛けてきた。

「え?今?」

「うん。ちょっと息が上がってるから」

全然自覚なかった…

「大丈夫だよ。みんなと話してただけだから、苦しくないよ」

そう反論してみたけど、そのやり取りを聞いていた翔太が声を掛ける。

「美優ちゃん、準備は俺らに任せて、航也にしっかり見てもらいな?」

華も賛同するように翔太の横で頷いている。

みんなに背中を押されて、渋々寝室に向かう。

寝室に入ると、

「美優?無理しない約束だよ。苦しくない?ちょっと息が上がってるのが気になるから見せて」

航也の言葉に美優は静かに頷き、聴診器が入ってくる。

「はい、いいよ。喘鳴は聞こえないね。今のうちに吸入しとこう」

そう言われて大人しく従い、吸入を済ませる。

リビングに戻ろうとすると、航也が1つ提案をする。

「美優の体調が今大丈夫だったら、このまま俺ら2人で買い物に出ないか?
あの2人ならちょうど準備してる最中だから、買い忘れた物があるとか言って出て行けるだろ?翔太と華ちゃんの2人きりにできるチャンスかなって」

「うん、そうだね!それがいいね!」

リビングに行き、それとなく買い物に行くと伝えて、2人は家を出る。

出る直前に華にウィンクしたから、きっと気付いてくれるはず!!

一応、華に「今がチャンスだよ!頑張れ!」ってメールを送っておいた。