〜美優の病室〜
「美優?ちょっと話があるんだけど、今いいか?」

「うん、なに?」

「まだ本格的な退院は無理だけど、ちょっとずつ外泊リハビリをして、体を家での生活に慣らしていこうと思うんだ。
まだすぐに熱が出たり、貧血が出たり、発作の対応もまだ心配だから、俺が一緒にいる時に限るけど。
俺が朝仕事終わったら一緒に帰って、次の日に俺が当直の時間に合わせて、夕方病院に戻って来ようと思うんだけど、どう思う?」

航也は一方的に方針を決めるのではなく、美優の気持ちをまず聞いてから決める。

「えっ!いいのー?」

美優の表情が一気に明るくなる。

「うん、それでね、病院では看護師さんが毎朝測ってくれてたピークフロー値を毎日自分で測ってもらいたいんだ。
気管支の状態を知って、あらかじめ発作が出る前に気を付けておくことが出来るからね」

「うん、わかった」

ピークフロー値とは、息を思いっきり吐いた時の数値をグラフに記入する。

その日の自分の気管支の状態を把握でき、数値が低くなり始めた時が1番発作が起こりやすいと言われているので、予め心の準備ができる。

「よし良い子だな。一緒に頑張ろうな。ちょうど今日、俺当直だから、明日の朝俺と帰ろうか?準備しといて」

「うん!嬉しい!久しぶりのお家!」

「ハハハ、あんまりはしゃぐと熱出て帰れなくなるぞ。じゃ、またな」

航也は仕事に戻って行った。

外泊リハビリとは言え、病院から出れることが嬉しくてたまらない。

その後、看護師さんが来て、ピークフローの装置の使い方を教えてくれた。

装置と言っても手で持てる大きさだから、邪魔にならないし、プラスチック製だから重くない。

毎朝ベッドサイドに置いて決まった時間に測るように言われた。

看護師さんと入れ替わるように、翔太先生が入ってきた。

「美優ちゃん明日、外泊リハビリするんだって?体調が良くなってきた証拠だね」

「うん、航也が良いって!」

「そっか。この先、外泊する頻度や日数が増えれば、家でやる宿題を出そうかなと思うけど、初めは1泊みたいだから、航也と一緒にゆっくり過ごしておいで。くれぐれも無理はしないようにね」

「うん!翔太先生ありがとう!」

「おっ、元気な声だね!よろしい」

美優は明日が待ち遠しかった。