〜呼吸器管理を始めて1週間〜
美優の状態が徐々に落ち着いてきたので、鎮静剤投与を中止し、呼吸器の離脱に向けて、意識が戻るのを待つことになった。

鎮静剤の点滴を切ってからしばらくして、美優の意識が戻ったと看護師から連絡が入り、急いで病室に向かう。

「美優?わかる?わかったら手握ってごらん?
うん、わかるね。今から、口の管抜くからね。少し気持ち悪い感じがして、咳が出るけど、頑張って深呼吸だよ。俺も看護師さんも側にいるからね」

美優がパニックにならないようにしっかり説明をしてから処置を行う。

初めてのことで怖いのか、涙を流している美優。

ベッドを少し起こしてから、素早く管を抜き、美優の口に酸素マスクを当てる。

美優は、管を抜いた刺激で苦しそうに咳をしているが、こればかりは仕方ない。

看護師が美優の口の中に溜まった唾液を吸引してくれる。

「美優?今、出てる咳は発作じゃないから大丈夫だよ。ゆっくり深呼吸だよ、そう、上手」

咳が続く美優がパニック発作を起こさないように、航也は美優の後頭部とマスクを挟むように両手で押さえながら、美優に声を掛け、モニターの値をチェックする。

sPO2が90、92、95、97%と徐々に上がってくる。

「胸の音聞くよ。深呼吸してごらん。よし、もう大丈夫だな。看護師さん、後でおしっこの管も抜いてあげて」

「わかりました」

無事、呼吸器から離脱することができ、航也もホッとする。

重度の発作を起こした美優の呼吸状態は、まだ予断を許さない状態だが、日に日に確実に回復に向かっている。