あれから僕は
少し大人になり。


 選択肢が
ひとつしか見当たらない。


すぐに、
どっちか答えなくちゃならない

逃げ場を失ったような時。


僕は監督の言葉を、
繰り返す。 



(どっちでもイインだ!
 どっちでもイインだっ


 どっちでもイインだ。


 僕は、自由。



 1…2…3)


「はい
 僕やります。」


迷わず、

僕は答える事が、出来る。




 ずっとずっと後になって、
監督が、
父だったと、

僕は、識る。



 たった少しだけ。


あの

一緒に過ごした、
僅かな時間に
一生分の大事なことを


教えてくれたのだと、
おもう父として。