そう安堵したのもつかの間

「よし、せっかくだし」

すぐに切り替えた彼女は青木くんの寝顔を拝みはじめた

「まな...ちゃん?」

「紅季、静かに」

人差し指を口の前にもってきて静かにのポーズをしながら近くによって来た彼女は私の耳元でこしょこしょ話してくれる

「だって人気な青木くんだよ?こんなに近くでなんて今後機会がないと思うの。写真は盗撮になるから網膜に焼き付けたくてね。あとは...」


これと彼女が取り出したのはペン

自分の持ち物に名前を書いていくあのペンをポケットから取り出した彼女

この際、なんでポケットにあったかってことはおいておいて...

何に使うつもりなの?

そんな私の疑問が顔に出ていたのだろう

ニシシと悪戯っ子のごとく笑った彼女

キュポンとキャップを外して青木くんへ近付いていく

「紅季、名前を書く以外にも使い道はあるのよ」

こんな風にね、と青木くんの顔をキャンバスに描きはじめてしまった

ひぇ、絶対あとで怒られそう

怖いもの知らずなまなちゃん

描き終わると満足したのか先に教室へ戻ってるねと言い残し、屋上から出ていった

残されたのは私と寝ている青木くん

顔に描かれているときですら起きなかったからずいぶん疲れているのかもしれない


まなちゃんが出ていったドアから目を離し青木くんの寝ている方へ視線を戻す


「え、青木くん?」

「実は初めから寝てなかったんです」


座っていた彼
右足は前に伸ばし、左足を立てたところに手を組んで置いていて、頭を支えている


私は立てっているから青木くんから上目遣いをされている状態なわけで...


うん、たしかにこれは騒ぐよね


私が上目遣いなんて不細工になるだけだもの

高度な技術だよ本当に


「いい人ですね」

「そうなの、私の一番の友だちなんだよ」


まなちゃんが出ていった扉を見ながら話す彼

こんな短期間でまなちゃんの良さをわかってくれるとは

なんだかとっても嬉しくて