牟呂くんは少し嫌そうな顔をしていたけど教えてくれるだけありがたい

「呼び捨てでいいし、俺らに敬語なんていらねーよ」

ナチュラルに私のことを紅季呼びする彼

「こはが呼び捨てなら俺のことも呼び捨てで〜」

「俺のことは呼びやすいようにで大丈夫ですよ」

「…」

みんな距離つめるの早いよ

「紅季」

「きりんチャン」

「磯林先輩」

「…」

飛塚くんはさっきまでサン付けだったし、青木くんは先輩って呼んでくれていた

牟呂くんだけは相変わらず無言だけど

でも、嫌じゃない

私のことを呼んでくれるのはまなちゃんだけだからむしろ嬉しい

「わかった。みんなのことも榎宮くん、飛塚くん、青木くん、牟呂くん」

さすがに下の名前で呼べるほどコミュニケーション能力が高くなくて、友だちが増えて嬉しいな…なんて呑気に考えていたのがいけなかった

話して歩いていたせいで周りを見ていなかったんだ

琥珀くんたちが足を止めたのは壁への出入り口の門


「今日はもう遅い」


そう琥珀くんが言う


「きりんチャンまたな〜」

「磯林先輩、また明日行きます」

「…」


まだまだ4人といれるって思ってた

楽しい時間はあっという間で

そうだよね、私は外の一般人

もう少しみんなといたかったな…


「また会える?」


そう問いかけると、琥珀くんたちは


「あぁ」

「いつでもね〜」

「当たり前です」

「…」


とそれぞれ返してくれた

だったら寂しくないや


「また、ね」


みんなに手を振って門をくぐった