「あー!ここにいたのかよ馨」
「優弥か。どうした?」
「どうしたもこうしたも、お前に頼まれてたやつ終わったって報告に来ただけ」
「そうか、ありがとう。他の奴らにも礼を言っといてくれ」
「はいはい。で、2人はなんで固まったまま俺のこと見てんの?」
「お前の胡散臭い笑顔が気持ち悪いんだろ」
「えー、そんなことないと思うよ?ね、如月ちゃんと麗奈ちゃん」
「いや…初対面でそんな馴れ馴れしい人初めてだわ…」
「ちょっと麗奈ちゃん引かないで!?」
「優弥お前うるさい。早く戻れ」
桜井くんにギロリと睨まれ、優弥くんはそそくさと屋上を後にした。
それにしても桜井くんのこのオーラはなんなんだろう。有無を言わせないような、決して逆らってはいけないようなオーラを度々感じる。
もし逆らったらと考えるだけで恐ろしい。
でも、昨日の夜私と電話している時はすごく優しい声だったし、いわゆるギャップというやつなのかもしれない。日常的にあんなオーラ醸し出されてたら、たまったもんじゃないもんね。
「奏音、聞いてる?」
「え、あぁ、何?」
「奏音でもボーッとすることあるんだね。今日の夜も電話できる?」
「え、今日もですか…?」
「できないなら無理にとは言わないけど、時間あるならどうかなって思って」
「別にいいですけど…なぜ私?」
「奏音と話したいから。ダメ…?」
きゅるんとした仔犬みたいな目で、じーっと私を見つめる桜井くん。なんか、可愛く見えてきた。
こんなかっこいい顔で色んな表情されたら、女の子たちはたまらないよね。結構前に麗奈が桜井くんのファンクラブあるらしいよって話してたのを、今思い出した。
「昨日と同じ時間くらいにかけるから。じゃあ、またね」
そう言って、桜井くんは私の頭をぽんぽんと撫でてて屋上を去っていった。
「ちょっと奏音、あんた大丈夫?あんな人に目付けられて…心配なんだけど」
「私も謎なんだけどねぇ…入学式の時に助けたってだけで、ここまでしてくるかな…」
「とにかく、電話したりするのはいいけど、何かされたらすぐ言ってよ?」
「うん、ありがとうね」
ものすごく心配そうな顔で私を見る麗奈に、少しだけ心が痛む。私に何かあればすぐに来てくれて、いつも助けてくれていた麗奈を少しでも安心させてあげたいな。
結局その日は誰からもいじめられることなく、気がつけば放課後になっていた。桜井くんが何をしたのか知らないけど、彼のおかげであることは間違いないし、電話した時にでもお礼を言おう。