冬に蝕まれ始めた空気の中、黒に塗り潰される中間辺りの世界に僕は立っていた。

他には誰もいない大学の最寄り駅のホーム、右隣に立つのは150センチの小さな体の彼女。

柔らかそうなキャラメル色の髪が優しい風に揺らされ、俺の右手を優しく誘引する。

彼女の死角になっているはずの左斜め後ろから、ゆっくりと右手を近付ける。

その手が彼女の髪に触れるか触れないかという刹那、破壊力抜群の衝撃が俺の鳩尾に突き刺さる。

変な音がして、胃から食道を突き抜けて来た生暖かい空気が漏れ出す。