「蜘蛛の糸は屋敷の下で蜘蛛二百匹を飼育して集めたんだ。いやー、大変だったな。メイド達が全員嫌がって飼育してくれないから、僕が全部やる羽目になってさ。団長にここで蜘蛛を飼ってもいいかって確認したんだけど、ダメって言うから──」
「当たり前だろう」
背後から呆れたような声がした。ジャンだ。
「それで、それが例の品か?」
「はい。上手くできていると思いますよ。少なくとも、ベアトリスさんにお化けだと間違えられる位には上手くできています」
カイルは得意げに胸を張る。
「なるほど。ベアトリス、ほらっ」
ジャンがカイルから受け取った黒い布を、ベアトリスに手渡す。
「え? わたくし?」
ベアトリスはなぜこれを自分が渡されたのかがわからず、困惑した。広げると、フード付きケープのようだ。
「今日の潜入捜査の際に、被っておけ。周囲から認識されにくくなるから、身の安全に繋がる」
「あ、なるほど。ありがとうございます」
カイルによると、これは周囲の景色に体を紛れ込ませる魔導具らしい。そこにいるとわかりにくくなるため、潜入捜査に役立つという。
「モヒート商会だけど、予定通り裏の入口からこっそり潜入するよ。ランスは正面から入って気を惹いておいてね」
「わかりました」



