その五分後、ベアトリスは平謝りしていた。
「お化けだと勘違いしてすみません」
「いやいや、いいよ。だって、それだけ僕が作ったこの魔導具が素晴らしいってことでしょ? これはね、僕の研究の賜なんだよ。蜘蛛の糸で織り込んだ特製の布地をリーヌ川の畔に咲く沈丁花の朝露で洗うことにより魔力を込めた──」
夢中になって説明するのは、本日の指揮を執るカイルだ。顔を引きつらせるベアトリスに気付くことなく、カイルは饒舌に語り続ける。
「沈丁花は、沈丁花ならなんでもいいわけじゃないんだ。リーヌ川の畔に咲く沈丁花なんだよ。だから、朝早くリーヌ川の畔まで取りに行ったんだ。一回で数滴しか取れないから、集めるのが本当に大変で──」
「そうでしょうね」
ベアトリスは頷く。
「あ、わかってくれる? さすがは未来の王妃様だね」
色々と突っ込みどころが多すぎる。
ベアトリスはお飾り妃なので未来の王妃様ではない。
(って言うか、人が変わりすぎじゃ……?)
ベアトリスはなおも饒舌に喋り続けるカイルを唖然と見つめる。
アルフレッドから魔導具のことになると人が変わるとは聞いていたけれど、変わりすぎだ。はっきり言って、完全に別人だと思う。
普段の「あ、うん」しか言わない彼は幻だったのだろうか。



