俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?


 アルフレッドからカイルは寡黙であると聞いてはいたものの、ここまで寡黙だとは思わなかった。事前の友人からの情報やアルフレッドから聞いた話を勘案して、ベアトリスはカイルのことを勝手に、もっとこう、ミステリアスな感じの人だと思っていたのだ。

 実際のカイルはと言うと、濡れ羽色の髪の毛はいつもぼさぼさで目元までかかっているため、ぼさっとした印象を受ける。その髪のせいで顔がよく見えないのだが、鼻から下を見る分には整っているように見える。長身で、実験服のようなロングガウンを着ていることが多い。

「明日の件の打合せは、あとで呼んでいただけると言うことでよろしいですか?」
「あ、うん」

 安定の返事だ。ベアトリスは片手で持っていた書類を両手に持ち直す。

「それでは、わたくしは失礼い──」

 そのとき、「え、それっ!」と大きな声がした。カイルが喋ったのだ。

(え? 「あ、うん」以外に喋った!)

 驚くベアトリスの左手を、カイルはむんずと掴む。

「やっぱり! これって、宝凜(ほうりん)の指輪じゃない!?」
「ほ、ほうりんの指輪?」