◆ 第二章 お飾りの妃は補佐官として奮闘する


 山積みになった書類を纏めていていたベアトリスは、ふうっと息を吐く。

(世の中にはわたくしの知らないことがたくさんあるのね)

 今確認している書類は、王都に暗躍している不法人身販売の組織に関する報告書だった。

 本来であれば不法人身販売の組織の取り締まりは王都騎士団の保安隊が担当する項目だ。しかし、遅々として調査が進まないことを不審に思った錦鷹団が調査に乗り出したところ、とある貴族が利益の一部を受け取ることを見返りに調査を妨害していたことがわかった。

(スリーコム子爵って昔、舞踏会で会ったことがある気がするわ。あんな虫も殺さぬ風情の人がこんなことをしていたなんて!)

 人を見かけで判断してはいけないとはまさにこのことだ。

 書類には、大なり小なりこの事件に関係していたと思われる貴族の家門や平民の有力者の記載もあった。どれも、もしこの調書を読まなければベアトリスは〝ただの善良な人〟としか思わなかったと思う。

(見かけによらないといえば、ローラもか)

 忘れかけていた苦い思い出が蘇り、ベアトリスは唇をぎゅっと引き結ぶ。