「え、え? 行こうってどこに?」
そもそも、この男が誰なのかがわからないので状況がさっぱり理解できない。なんのドッキリだろうか。シナリオを一度も見せられたことがないのに舞台の本番に突然押し出された気分だ。
「無理です。わたくし、ここに婚活しに来たので」
「婚活? それならもう、必要ない」
男はきっぱりと言い切る。
(必要ないわけないでしょ! 必要あるからここに来たのよ!)
ベアトリスは呆気にとられて男を見返す。
そのとき、会場の空気を切り裂くような鋭い声がした。
「お待ちください、アルフレッド殿下!」
(アルフレッド殿下ですって!?)
アルフレッド殿下と言えば、数カ月前に帰国したばかりの王太子殿下だ。まさかと思ったがベアトリスの腰を抱いていた男は呼びかけに応じるように背後を振り返り、目を眇めた。
「殿下は騙されております。その女は、ブルーノ様とわたくしが親しくしていることに嫉妬して散々悪事を働いた──」
ローラは男が立ち止まったことにホッとしたような表情を浮かべ、早口で捲し立てる。



