俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?


「名前を聞くなら自分が名乗ったらどうなの?」

 ベアトリスはさすがにムッとしてジャンを睨み付ける。
 ベアトリスは彼の名前がジャン=アマールであり、役職がここの団長であることを知っている。しかし、それはあくまでも封筒に書いてある文字を読んだからであって、彼自身からは自己紹介されていない。

「なんだと?」
「だって、それが礼儀でしょう? それにあなたって、親切に届けてあげたわたくしに対してお礼のひとつも言えないのね」

 男の眉間に深い皺が寄る。

「コーベット伯爵令嬢のベアトリスよ。これで満足? 団長閣下」

 挑発するように言うと、ジャンはくくっと笑い出した。

「俺にこんな口を利いたのはお前が初めてだ、ベアトリス」
「それはどうも」

 ベアトリスは肩を竦めて見せる。

「ジャン=アマールだ。お前のことは、よく覚えておこう」
「覚えておかなくて結構よ」

 ジャンは口を尖らせるベアトリスを見つめ、意味ありげに口の端を上げた。