俺様王太子に拾われた崖っぷち令嬢、お飾り側妃になる…はずが溺愛されてます!?


「これは読めるか?」
「え?」

 ベアトリスはジャンが持っていた書類を受け取る。パッと目を通した限り、セルベス語でもヒフェル語でもない言語だ。

「これはたしか、ネキサム語じゃないかしら? 何かの日程表みたいね。旅行……ううん、ここに訓練って書いてあるから軍事演習かしら」
「ご名答」

 ジャンは面白いものでも見つけたかのように、ベアトリスを見つめて口の端を上げる。

(なんでこんな文字を使ってるのかしら?)

 ネキサム語はヒフェル語と同じく、失われた古代文字だ。日常生活で見かけることはまずないので、ベアトリスは不思議に思った。

「あなたも読めるの?」
「当たり前だろう」

 何を当然のことを、と言いたげにジャンは答える。
 本当に偉そうな男だ。まあ、団長だからここで一番偉いのは間違いないのだろうけれど。

「お前、名前はなんという?」

 さっき名乗りましたけど、という言葉はすんでの所で呑み込んだ。本当に、どんだけ俺様なのだ。