その男、ジャン=アマールは訝しげな表情でこちらを見る。
「お前は確か先日の──」
ジャンはベアトリスのことを覚えていたようだ。ベアトリスは改めて、持っていた封筒を差し出した。
「ご機嫌よう。ベアトリス=コーベットと申します。これをあなたに。先日、舞踏会の日にこれを落としたでしょう?」
ジャンはその封筒を見つめ、次にベアトリスを見る。
「どうしてこれを落としたのが俺だとわかった?」
「どうしてって……。あなたが去ったあとに落ちていたし、宛名に『錦鷹団 ジャン=アマール団長閣下』って書いてあるじゃない。あなたのことじゃないの?」
「なんだと……?」
ジャンはベアトリスを見つめ。眉根を寄せる。
(もう、さっきからなんなのよ! この手紙を落としたくらいだからこの人が団長じゃないの!?)
ベアトリスはこの手紙を届けたことを心底後悔した。
こんなことなら、差出人のカイル=ベイツの元に送り戻して『落ちていたからもう一度この人に送り直したほうがいいと思います』と伝えればよかった。ベイツ侯爵家であればきちんと貴族年鑑にも載っていたのに!
「お前、ちょっと来い」
「え?」



