ベアトリスは意外に思う。
この人が自分が間違っていたと認めるなど、どんな天変地異の前兆だろうか。そんな殊勝なところがあったなんて。
しかし、その考えは次の瞬間に霧散する。
「この煩さは、子猫じゃなくて子犬かもしれない」
「なっ!」
「一度しか言わないから、しっかりと聞いておけ」
アルフレッドはソファーに預けていた片手を外し、ベアトリスの頬を撫でる。鼻先が触れそうな距離で、見つめられた。
至近距離に美麗な顔が迫り、ベアトリスの胸は跳ねる。
「ベアティ。お前を愛している。俺の正妃になれ」
「……え?」
ベアトリスは大きく目を見開き、アルフレッドを見つめる。
「嘘……。もう一度──」
「ふざけるな」
「お願い!」
だって、聞き間違いかもしれない。それくらい信じられなかったのだ。
「一度しか言わないと、言ったはずだ」
アルフレッドは冷たく言い放ち、ベアトリスの願いはあえなく一蹴される。ベアトリスは頭を抱えた。



