「あの……、殿下」
「なんだ?」
「実はお願いがありまして」
「城下なら、護衛を付けてなら行っていいぞ」
「いえ、その件ではなく」
ベアトリスはすうっと深呼吸する。
「わたくしと離縁してくださいませ!」
「…………。なぜだ? 理由を言え」
その瞬間、アルフレッドの声が一段低くなった気がした。口元は微笑みを湛えているのに、こちらを見つめる目は全く笑っていない。
「実は、殿下が正妃を娶ろうとしていると噂に聞きました」
「ああ、そうだな」
アルフレッドは鷹揚に頷く。
その反応に、ベアトリスは少なからず傷ついた。
その噂は嘘だと言ってくれることを、心のどこかで期待していたから。
「お飾りとはいえ、わたくしのような寵妃がいると正妃様が面白くないと思うのです。ほら、昼間ずっと一緒にいて、夜もこうして話していることが多いですし──」
ベアトリスは目を伏せる。
本当はベアトリス自身が、アルフレッドが正妃といる姿を間近で見るのが嫌なのだけれど、それは言いたくなかった。
一方のアルフレッドは、目を瞬いた。



