セルベス国の貴族制度は、男性のみがその爵位を継ぐことができる。もし嫡男がいない場合は娘の配偶者が継ぐ。それもいない場合、一時的に爵位が国庫預りとなる。その期間は三年で、三年経っても結婚できないと永久に爵位は戻ってこない。
歴史を振り返ると過去に女性の爵位持ちも存在するにはするのだが、その実情は王族からの口添えなどの強力なバックアップがない限りはまず貴族院の議会を通らない。
つまり、現在コーベット伯爵家の跡継ぎはベアトリスしかおらず、そのベアトリスは女なので爵位が継げないのだ。このまま結婚できずにいると、祖父が亡くなったときに爵位は国庫預りとなり、三年後にはベアトリスは貴族ですらなくなる。
ベアトリス自身は翻訳の仕事があるので平民になってもいいと思っているが、祖母や屋敷の使用人達がその巻き添えになって路頭に迷うのは避けたい。つまり、あまり悠長に独身生活を謳歌している暇はないのだ。
「婚活するしかないわね……」
ベアトリスはぼそりと呟く。
「いいわね! じゃあ、今度バトラー公爵家で舞踏会があるから、ベアティにも招待状を送ってもらえるようにサミュエルに伝えておくわ」
「本当? ありがとう!」
サミュエルとはマーガレットの婚約者で、バトラー公爵家の嫡男だ。マーガレットによると、今は複数ある騎士団の統括をする部署にいるらしい。



