言い返そうとしたが、こちらを見つめるアルフレッドの瞳が真剣で、胸がドキンと跳ねた。
ベアトリスは咄嗟に後ずさり、すぐ横にあったバラのほうに顔を向ける。
「わあ。これも綺麗ですね!」
動揺を隠すように元気よく言った言葉が、不自然に聞こえてなければいいけれど。
ちょうど目の前にあるのはオレンジ色のバラだった。視界の端に、ジャンの視線を感じる。
「気に入ったなら、あとで部屋に届けさせよう」
ジャンがまた、ふっと笑った。
(どうしたのかしら、わたくし。さっきから胸がおかしい)
ジャンの些細な表情の変化で、動揺してしまう。
ベアトリスは気持ちを落ち着かせようと深呼吸する。鼻から深く息を吸うと、バラの香りに包み込まれる。
(ここは王族専用って言っていたかしら?)
さっき、ジャンはそう言っていた。
ふと、先ほどブルーノから言われた言葉が脳裏によみがえる。
『アルフレッド殿下は正妃を迎えられるともっぱらの噂だ』
ブルーノはコールマン侯爵家の嫡男だ。彼の父親は王宮の中枢部に出入りしており、この情報はある程度確度が高いのだろう。
(正妃を迎えられたら、その方もここに連れていらっしゃるのかしら?)
アルフレッドは正妃を連れてここを歩き、ときに花を愛でたり微笑み合ったりする?



