ベアトリスははあっと息を吐く。
「真実の愛ですって? あれが真実の愛なら、世の中には真実の愛しかないわ」
マーガレットは怒り心頭の様子でハンカチを握りしめる。ベアトリスはそんなマーガレットを見て苦笑した。
「マーガレット、心配してくれてありがとう。わたくしはもう大丈夫よ。それに、結婚する前にあんな浅はかな人だとわかって大助かりだわ。結婚したあとに『真実の愛』を見つけられたら、それこそ本当に手が負えないもの」
ベアトリスは両手を天井に向けて肘をおり、肩を竦める。
マーガレットは目を瞬かせ、次いでくすくすと笑い出した。
「それもそうね。大事なベアティがおかしな男と結婚せずにすんだわ。今日は祝杯を上げなきゃ。乾杯!」
マーガレットはちょうど目の前に置いてあった紅茶の入ったティーカップを持ち上げて、乾杯のポーズをする。その仕草がおかしくて、ベアトリスもくすくすと笑い出す。
「婚約破棄したことは全然気にしないんだけど、ひとつだけ問題があるとすればお祖父様とお祖母様にご心配をかけてしまったことね。ほら、おふたりとも高齢であることを気にしているから──」
ベアトリスは、しゅんと肩を落とす。



