「さっきの方が落としたのかしら? えっと、ジエ……ううん、違うわ。ジャン……ジャン=アマール?」
宛名には、ヒフェル古代文字 で『錦鷹団(きんようだん) ジャン=アマール団長閣下』と書かれていた。送り元を見ると、『カイル=ベイツ』いう文字が書いてある。そして、封筒には金色の鷹のようなマークが刻印されていた。
「カイル=ベイツってベイツ侯爵家のカイル様のことかしら?」
ベアトリスは貴族の端くれ。高位貴族の名前と顔は大体記憶している。
ベイツ侯爵家は代々王家に仕える名門中の名門貴族であり、カイルはそこの嫡男だ。舞踏会で一度だけ姿を見たことがある。先ほどの男性と同じ黒目黒髪だったが、顔は違った。
「ってことは、この『ジャン=アマール』というのがさっきの人の名前なのね」
ベアトリスは即座に予想を付ける。
(団長閣下になるくらいなら高位貴族だとは思うけれど、アマール家なんて家門はあったかしら?)
一度も舞踏会であったことがないし、聞いたこともない気がする。とは言え、ベアトリスも全ての貴族の家門を頭に入れているわけではないのでもしかしたらあるのかもしれない。
「錦鷹団っていう騎士団も聞いたことがないわね」



